平成19年度病害虫発生予察特殊報第1号
平成19年4月26日
栃木県農業環境指導センター
キク茎えそ病(仮称)について
1 病原ウイルス:Chrysanthemum stem necrosis virus(CSNV)
2 作物名:キク
3 発生経過
2007年3月、塩谷町の施設キクで茎のえそ、葉の退緑・えそなどのTomato spotted wilt virus(TSWV)によるキクえそ病に酷似する病徴を呈した株が発生した。
農業試験場病理昆虫研究室においてRT-PCR法により、TSWVの検出を試みたがTSWVは検出されなかった。(独)九州沖縄農業研究センターが設計したCSNVに特異 的なプライマーを用いたRT-PCR法により、Chrysanthemum stem necrosis virus(CSNV)による病害の可能性が示唆された。
そこで、九州沖縄農業研究センターへ同定依頼した結果、平成18年8月に広島県で 発生したCSNV(トスポウイルスの一種)によるキク茎えそ病(仮称)であることが判明した。なお、本病害の発生確認は、国内では2例目である。
4 病 徴
茎えそ、葉の退緑・えそ・輪紋、奇形を呈し、TSWVによるキクえそ病に酷似する。 病徴は品種によって異なる(図1〜3)。
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図2 葉の退緑・輪紋症状
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図1 茎のえそ症状 |
図3 葉及び茎のえそ症状 |
5 診 断
病徴はTSWVによるキクえそ病に酷似するため、病徴による診断は困難であるが、
RT-PCR法による診断が可能である。
6 病原ウイルスの性質及び伝染
海外の報告では、ミカンキイロアザミウマ及びフランクリニエラ・シュルッツァイ(ア ザミウマ科)により永続伝搬される。フランクリニエラ・シュルッツァイは、熱帯性の 害虫で日本では未発生である。また、本病原ウイルスは、感染した親株から挿し穂へと、 栄養繁殖を介しても伝染する。
7 ミカンキイロアザミウマについて
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野菜類、花き類、果樹類に広く寄生する害虫である。吸汁害により花弁の白斑や汚れ、葉表のケロイド症状を引き起こす。成虫は青色に誘引される習性があるので、青色の粘着トラップを設置しておくと発生消長を把握することができる。
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8 防除対策
(1)発生ほ場では、発病株の抜き取り・埋没処分を行い、二次伝染防止に努める。発生ほ場では、親株の感染も予想されるため、無病親株への更新を行う。
(2)媒介虫であるミカンキイロアザミウマの防除を徹底する。特に、親株床での防除を徹底する。
(3)ミカンキイロアザミウマの防除に当たっては、薬剤による防除だけでなく、ハウス開口部への白色または銀色の防虫ネット(1mm目合い以下)展張、ほ場及び周辺の除草など物理的、耕種的防除も併用する。
9 キクのミカンキイロアザミウマ及びアザミウマ類に登録のある農薬
(4月23日現在の登録状況)
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薬 剤 名 |
希釈倍率等 |
使用時期/使用回数 |
適用害虫 |
モスピラン粒剤
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3〜6kg/10a植溝土壌混和 |
定植時/1回
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ミカンキイロアザミウマ
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ベストガード水溶剤 |
1,000倍 |
発生初期/4回以内 |
ミカンキイロアザミウマ |
トクチオン乳剤 |
1,000倍 |
発生初期/5回以内 |
ミカンキイロアザミウマ |
マッチ乳剤 |
1,000倍 |
発生初期/5回以内 |
ミカンキイロアザミウマ |
スピノエース顆粒水和剤 |
5,000倍 |
発生初期/2回以内 |
ミカンキイロアザミウマ |
カスケード乳剤 |
2,000倍 |
−/3回以内 |
ミカンキイロアザミウマ |
アファーム乳剤 |
1,000〜2,000倍 |
発生初期/5回以内 |
ミカンキイロアザミウマ |
プリンスフロアブル |
2,000倍 |
発生初期/5回以内 |
アザミウマ類 |
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注)農薬はラベルの表示を確認して正しく使用してください。
詳しくは農業環境指導センターにお問い合わせください。
TEL 028−626−3086
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