平成20年度病害虫発生予察特殊報第2号
平成20年12月10日
栃木県農業環境指導センター

キュウリ退緑黄化病(仮称)
 
1 病原ウイルス:ウリ類退緑黄化ウイルス 
         Cucurbit chlorotic yellows virus;CCYV(仮称)
 
2 作物名:きゅうり
 
3 発生経過
 平成20年11月、足利市、佐野市の施設きゅうりほ場から黄化症状を呈する葉を採取し、農業環境指導センターにおいてRT−PCR法によるウイルス検定を行ったところ、CCYV(仮称)が検出された。
 さらに、独立行政法人九州沖縄農業研究センターに同定を依頼したところ、CCYV(仮称)によるキュウリ退緑黄化病(仮称)であることが確認された。
なお、本病害は平成20年2月以降、九州地方7県、愛媛県、埼玉県、群馬県で確認されている。
 
4 病 徴
 発病の初期は、葉に退緑小斑点が生じ、斑点が増加・癒合しながら黄化、拡大して斑状の黄化葉となる。症状が進展すると葉脈に沿った部分を残して葉全体が黄化し、葉縁が下側に巻く症状が現れ(図1・2)、草勢低下と減収が認められる。
 病徴は、オンシツコナジラミが媒介するBPYVによるキュウリ黄化病と酷似しており、症状による識別は困難であるが、遺伝子診断による判別が可能である。
図1 病徴の進展した黄化葉 図2 複数の葉に発生した黄化症状
 
5 病原ウイルスの性質及び伝染
  病原ウイルスは、平成19年に独立行政法人 九州沖縄農業研究センターにより確認 されたクリニウイルス属の新規ウイルスでタバココナジラミバイオタイプQ及びBが媒 介し、半永続的に伝搬する(媒介能力が数時間から数日持続する)ことが確認されてい る。
  なお、既知のクリニウイルスは経卵伝染、汁液伝染、土壌伝染及び種子伝染はしない ことが知られている。
 
6 感染植物
  現在までに感染が確認された作物は、きゅうり、メロン及びすいかである。また雑草 では、オランダミミナグサ(ナデシコ科)及びクワクサ(クワ科)で感染が確認されて いる。
 
7 防除対策
(1)ほ場内及びほ場周辺の除草を行い、タバココナジラミの生息場所を根絶する。
(2)施設開口部に目合0.4mm以下の防虫ネットを張り、タバココナジラミの侵入を  防ぐ。また、近紫外線カットフィルムの利用や黄色粘着板の設置も有効である。
(3)ウイルス感染苗の持込みを防ぐため、苗の購入等に際しては十分な注意が必要であ  り、感染が疑われる苗は定植しない。
(4)育苗期からタバココナジラミの防除を徹底する。特に育苗期から生育初期の感染は  経済的に大きな被害につながるので、この時期の対策を重視する。
(5)発病した株は速やかに抜き取り、埋設やビニール袋等で密封し枯死させてから処理  する。
(6)施設栽培では、収穫終了後は施設を密閉処理(蒸し込み)し、残さに寄生している  タバココナジラミの拡散を防ぐ。
 
8 きゅうりのコナジラミ類に登録のある農薬(12月 4日現在の登録状況)
系統名 薬 剤 名 希釈倍率等 使用時期/使用回数
ネオニコチノイド系 スタークル粒剤     1g/株   育苗期/1回  
  1〜2g/株   定植時/1回  
アルバリン粒剤     1g/株   育苗期/1回  
  1〜2g/株   定植時/1回  
ベストガード粒剤     1g/株   育苗期/1回  
  1〜2g/株   定植時/1回  
スタークル顆粒水溶剤 2,000倍〜3,000倍 収穫前日まで/2回以内
アルバリン顆粒水溶剤 2,000倍〜3,000倍 収穫前日まで/2回以内
ベストガード水溶剤 1,000倍〜2,000倍 収穫前日まで/3回以内
ピラゾール系 サンマイトフロアブル 1,000倍〜1,500倍 収穫前日まで/2回以内
注 1)農薬はラベルの表示を確認して正しく使用する。
  2)スタークル粒剤、アルバリン粒剤、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶   剤は同じ有効成分(ジノテフラン)なので、成分の総使用回数に注意する。
  3)同一薬剤の連用を避け、異なる系統の薬剤をローテーション散布する。
 
詳しくは農業環境指導センターにお問い合わせください。
           TEL 028−626−3086