平成21年度病害虫発生予察特殊報第1号
平成21年9月29日
栃木県農業環境指導センター

ToCVによるトマトの病害について
 
1 病原ウイルス:Tomato chlorosis virus;ToCV
 
2 作物名:トマト
 
3 発生経過
 平成20年8月、県北部の施設栽培トマトほ場で、葉に黄化や葉巻、壊死などの症状が発生し問題となった。宇都宮大学植物病理学研究室の夏秋教授らが本症状について、遺伝子診断手法を用いた塩基配列等の解析を行ったところ、ClosteroviridaeCrinivirus属のTomato chlorosis virus(ToCV)であることが確認された。なお、本ウイルスについては国内での発生報告はない(トマト黄化病の2つ目の病原ウイルスとして提案中)。
 
4 病 徴
 発病の初期は、葉に退緑小斑点が生じ、斑点が増加しながら、黄化や葉巻症状を起こし、拡大して斑状の黄化葉となる。症状が進展すると、生理障害(苦土欠乏症)に似た症状を示し、葉脈に沿った部分を残して葉全体が黄化し、えそ斑点症状が現れる(図1・2・3)。
 
図1 発病したほ場の様子           図2 葉の黄化症状
   
 
 
 
 
 
 
 
 
 
図3 葉の黄化とえそ斑点
 
5 病原ウイルスの性質及び伝染
 病原ウイルスは、クリニウイルス属のウイルスである。既知のクリニウイルスは経卵伝染、汁液伝染、土壌伝染及び種子伝染はしないことが知られている。
 また、オンシツコナジラミ、タバココナジラミ(biotypeB)、日本で未発生のタバココナジラミ(biotypeA)、コナジラミの一種であるbandedwinged whitefly(Trialeurodes abutilones)が媒介し、半永続的に伝搬する。
 
6 感染植物
 現在までに感染が確認された作物は、トマトである。なお、宿主範囲については不明である。
 
7 防除対策
(1)ほ場内及びほ場周辺の除草を行い、コナジラミ類の生息場所を根絶する。
(2)施設開口部に目合0.4mm以下の防虫ネットを張り、コナジラミ類の侵入を防ぐ。  また、近紫外線カットフィルムの利用や黄色粘着板の設置も有効である。
(3)育苗期からコナジラミ類の防除を徹底する。
(4)発病した株は速やかに抜き取り、寄生するコナジラミ類とともにビニール袋に入れ、  発病株を枯死、コナジラミ類を死滅させてから埋設等処理する。
(5)施設栽培では、収穫終了後は施設を密閉処理(蒸し込み)し、コナジラミ類を死滅  させ、ハウス外へのコナジラミ類の拡散を防ぐ。
 
8 トマトのコナジラミ類に登録のある農薬(平成21年9月10日現在の登録状況)
系統名 薬 剤 名 希釈倍率等 使用時期/使用回数
ネオニコチノイド系
スタークル粒剤     1g/株 育苗期/1回
    1g/株 生育期 但し、収穫前日まで/ 2回以内
アルバリン粒剤     1g/株 育苗期/1回
    1g/株 生育期 但し、収穫前日まで/ 2回以内  
ベストガード粒剤   1〜2g/株 育苗期/1回
  1〜2g/株 定植時/1回
スタークル顆粒水溶剤 2,000倍〜3,000倍 収穫前日まで/2回以内
アルバリン顆粒水溶剤 2,000倍〜3,000倍 収穫前日まで/2回以内
ベストガード水溶剤 1,000倍〜2,000倍 収穫前日まで/3回以内
ピラゾール系 サンマイトフロアブル 1,000倍〜1,500倍 収穫前日まで/2回以内
微生物農薬

プリファード水和剤〈野菜類(施設栽培)〉    1000倍 発生初期/−
 
マイコタール
〈野菜類(施設栽培)〉
   1000倍 発生初期/−
 
その他

 
粘着くん液剤[タバココナジラミ類(シルバーリーフコナジラミを含む)]     100倍
 
収穫前日まで/−
 
クリアザールフロアブ    4000倍 収穫前日まで/2回以内
注 1)農薬はラベルの表示を確認して正しく使用する。
  2)スタークル粒剤、アルバリン粒剤、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水溶   剤は同じ有効成分(ジノテフラン)なので、成分の総使用回数に注意する。
  3)同一薬剤の連用を避け、異なる系統の薬剤をローテーション散布する。
 
詳しくは農業環境指導センターにお問い合わせください。
           TEL 028−626−3086