植物防疫ニュース(速報 No.2)
 
平成22年5月24日
栃木県農業環境指導センター
トマト黄化病(仮称)の発生状況について
 トマト黄化病(仮称)はToCV(Tomato chlorosis virus)によるトマトの新病害です。
本病の特徴は葉脈に沿った部分を残して葉全体が黄化し、えそ斑点症状が現れるなど生
理障害の苦土欠乏症状に類似します。そのため病徴から本病によるトマトの病害か生理
障害かを判別するのは非常に困難です(写真1・2)。
 平成22年4月から5月にかけて黄化葉症状のみられるトマトについて、サンプリン
グ調査を実施し、農業試験場病理昆虫研究室でRT-PCR法による検定を行いました。
 今回調査した結果、本病が県内で広く発生していることが確認されました(表1、図
1)。
 小玉果するなどの事例も報告されているが、本病が収量に及ぼす影響は不明な点が多
く、発生生態等については現在調査中です。
 媒介虫であるオンシツコナジラミ、タバココナジラミの天窓や出入口等からの侵入に
注意し、以下の防除対策を行い本病の発生を防ぎましょう。
表1 トマトサンプリング調査















        結果(5月現在)
市町名 調査ほ場数 ToCV検出ほ場数
那須塩原市   1   0
大田原市   6   0
那珂川町   4   1
塩谷町   2   2
さくら市   2   1
高根沢町   4   1
芳賀町   2   0
真岡市   5   1
宇都宮市   3   0
上三川町   3   0
鹿沼市   7   2
小山市   2   1
壬生町   1   0
栃木市   2   0
佐野市   2   0 図1 ToCVによるトマト病害の発生状況
足利市   8   1    ※●検出ほ場、×未検出ほ場 
  計  54  10     










 










 
写真1 葉の黄化症状  写真2 葉の黄化とえそ斑点
防除対策】
1)ほ場内及びほ場周辺の除草を行い、コナジラミ類の生息場所を根絶する。
2)施設開口部に目合0.4mm以下の防虫ネットを張り、コナジラミ類の侵入を防ぐ。
  また、近紫外線カットフィルムの利用や黄色粘着板の設置も有効である。
3)育苗期からコナジラミ類の防除を徹底する。
4)発病した株は速やかに抜き取り、寄生するコナジラミ類とともにビニル袋に入れ、
  発病株を枯死、コナジラミ類を死滅させてから埋設等処理する。
5)施設栽培では、収穫終了後は施設を密閉処理(蒸し込み)し、コナジラミ類を死
  滅させ、ハウス外へのコナジラミ類の拡散を防ぐ。
トマトのコナジラミ類に登録のある農薬(平成22年5月19日現在の登録状況)
系統名 薬 剤 名 希釈倍率等 使用時期/使用回数
ネオニコチノイド系 スタークル粒剤     1g/株 育苗期/1回
  1〜2g/株 定植時/1回
アルバリン粒剤     1g/株 育苗期/1回
  1〜2g/株 定植時/1回
ベストガード粒剤   1〜2g/株 育苗期/1回
  1〜2g/株 定植時/1回
スタークル顆粒水溶剤 2,000倍〜3,000倍 収穫前日まで/2回以内
アルバリン顆粒水溶剤 2,000倍〜3,000倍 収穫前日まで/2回以内
ベストガード水溶剤 1,000倍〜2,000倍 収穫前日まで/3回以内
ピラゾール系 サンマイトフロアブル 1,000倍〜1,500倍 収穫前日まで/2回以内
微生物農薬 プリファード水和剤    1000倍 発生初期/−
 

〈野菜類(施設栽培)〉
マイコタール    1000倍 発生初期/−
 
〈野菜類(施設栽培)〉
その他

 
粘着くん液剤[タバココナジラ     100倍
 
収穫前日まで/−
 
ミ類(シルバーリーフコナジラミを含む)]
クリアザールフロアブ    4000倍 収穫前日まで/2回以内
注1)農薬はラベルの表示を確認して正しく使用する。
 2)スタークル粒剤、アルバリン粒剤、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水
  溶剤は同じ有効成分(ジノテフラン)なので、成分の総使用回数に注意する。
 3)同一薬剤の連用を避け、異なる系統の薬剤をローテーション散布する。
詳しくは農業環境指導センターにお問い合わせください。
TEL 028−626−3086
http://www.jppn.ne.jp/tochigi/