平成22年度病害虫発生予察特殊報第3号
平成23年 1月11日
栃木県農業環境指導センター
トルコギキョウ葉巻病
1 病原ウイルス:トマト黄化葉巻ウイルス
         Tomato yellow leaf curl virus ;TYLCV
2 作物名:トルコギキョウ
3 発生経過
  平成22年12月、県南部で栽培されているトルコギキョウにおいて、草丈の伸び
が悪く、生長点部の葉巻症状を呈する株が見つかった。この株を採取し、農業試験場
病理昆虫研究室及び農業環境指導センターにおいてPCR法によるウイルス検定を行
ったところ、TYLCVが検出され、トルコギキョウ葉巻病であることが確認された。
  なお、本病害は平成11年に長崎県で初めて確認され、国内では計14県で発生確
認されている。関東では千葉、茨城、群馬及び埼玉県に次いでの発生となる。
4 病 徴
 病徴は、発病部位より上は節間が短縮し、萎縮する。葉は小型化し、葉脈が隆起し
葉表を内側にして巻葉する(図1、2)。

















 
図1 トルコギキョウ葉巻病の発病株 図2 葉脈の隆起症状
5 病原ウイルスの性質及び伝染
 本ウイルスは、タバココナジラミによって伝搬される。成虫、幼虫ともに罹病株を
吸汁することで保毒し、1〜3日の潜伏期間を経て、ウイルスを伝搬する能力を有す
る。伝染は永続的に行われるが、経卵伝染はしない。また、種子伝染、土壌伝染 、汁
液伝染はしない。
6 感染植物
 感染が確認されている植物は、ナス科(トマト、タバコ、チョウセンアサガオ、ペ
チュニア等)、リンドウ科(トルコギキョウ)、キク科(ヒャクニチソウ、ノゲシ等)、
トウダイグサ科(エノキグサ等)、マメ科(インゲンマメ、ヒラマメ)、アオイ科(ウ
サギアオイ)、ナデシコ科(ウシハコベ)などである。また、病徴は、トマト、チョ
ウセンアサガオ、ペチュニア、トルコギキョウ、インゲンマメなどで確認されている。
7 防除対策
(1)ほ場内及びほ場周辺の除草を行い、タバココナジラミの生息場所を根絶する。
(2)施設開口部に目合0.4mm以下の防虫ネットを張り、タバココナジラミの侵入
  を防ぐ。また、近紫外線カットフィルムの利用や黄色粘着板の設置も有効である。
(3)ウイルス感染苗の持込みを防ぐため、苗の購入等に際しては十分な注意が必要で
  あり、感染が疑われる苗は定植しない。
(4)特に定植時から生育初期の感染は大きな被害につながるので、初期からタバココ
  ナジラミの防除対策を徹底する。
(5)発病した株は速やかに抜き取り、埋設やビニル袋等で密封し枯死させてから処理
  する。
(6)施設栽培では、収穫終了後に全ての株を地際から切断し、蒸し込み処理(40℃
  以上で10日以上(継続した晴天日3日以上))を行い、残さに寄生しているタバ
  ココナジラミを完全に死滅させる。
8 トルコギキョウまたは花き・観葉植物のコナジラミ類に登録のある農薬
(平成23年1月4日現在の登録状況)
系統名 薬 剤 名 希釈倍率等 使用時期/使用回数
ネオニコチノイド

アクタラ顆粒水溶剤 2000倍 発生初期/6回以内
スタークル粒剤    1g/株(但し、10a
当り30sまで)
定植時/1回
 
アルバリン粒剤    1g/株(但し、10a
当り30sまで)
定植時/1回
 
スタークル顆粒水溶剤 2000倍 発生初期/4回以内
アルバリン顆粒水溶剤 2000倍 発生初期/4回以内
ベストガード水溶剤  1000倍 発生初期/4回以内
ピリジンアゾメチ
ン系
チェス顆粒水和剤
 
5000倍
 
発生初期/4回以内
 
注 1)農薬はラベルの表示を確認して正しく使用する。
  2)スタークル粒剤、アルバリン粒剤、スタークル顆粒水溶剤、アルバリン顆粒水
   溶剤は同じ有効成分(ジノテフラン)なので、成分の総使用回数(5回以内(定
   植後は4回以内))に注意する。
  3)同一薬剤の連用を避け、異なる系統の薬剤をローテーション散布する。
詳しくは農業環境指導センターにお問い合わせください。
TEL 028−626−3086
http://www.jppn.ne.jp/tochigi/