平成23年度病害虫発生予察特殊報第1号
平成23年 7月 8日
栃木県農業環境指導センター
ToMV新系統によるトマトの病害について
1 病原ウイルス:トマトモザイクウイルス(Tomato mosaic virusToMV)
2 作物名:トマト(促成長期どり栽培)
3 発生経過
 平成23年5月、県南部の施設栽培トマトほ場で、ToMV抵抗性遺伝子Tm-2aを持
つトマト品種の葉にえそ症状が発生し、宇都宮大学農学部植物病理学研究室で本症状
を呈する葉について遺伝子診断を行ったところ、Tobamovirus属のToMVであること
が確認された。なお、本ウイルスがTm-2a型ToMV抵抗性トマト品種で、全身にえそ
症状を起こした事例は国内初である。
4 病 徴
 発病の初期は、葉裏の葉脈にえそ症状が現れる。その後、えそが激しくなって次第
に葉の表面でもえそが見えるようになり、生長点付近が萎れ、葉先の枯れやえそが拡
大してえそ斑になる。最終的には株全体にえそ症状を引き起こし、枯死寸前まで症状
が進む。なお、果実にえそ症状は現れない(図1、2、3、4、5)。








 
図1 葉裏のえそ症状   図2 葉裏のえそ症状










 
図3 葉表のえそ症状   図4 葉表のえそ症状
図5 株全体の発病の様子
5 病原ウイルスの性質及び伝染
 病原ウイルスは、タバコモザイクウイルスと同じ300×15nmの棒状ウイルスであ
る。汁液伝染する。また、水を介して容易に伝染する。虫媒伝染はしない。本病は、
高温条件で症状が出る。本ウイルスがTm-2a型ToMV抵抗性トマト品種で容易に全身
感染してえそ症状を示すことから、新系統のToMVと考えられる。
6 感染植物
 現在までに感染が確認された作物は、トマトである。なお、宿主範囲については不
明である。
7 防除対策
 抵抗性品種に容易に感染するため、いまのところトマト品種を利用した防除は出来
ない。TMV対策と同様に以下の対策を実施する。
(1)床土、播種箱、育苗鉢、ロックウールマット、栽培槽などの消毒を行う。
(2)発病株は、早期に見つけ次第抜取り処分する。残根は残さない。
(3)管理作業の前後や合間には、手を石けんで洗い十分水洗する。鋏などの器具も
  消毒する。
(4)芽かき、誘引などの管理作業は必ず健全株から始め、感染の疑わしい株は最後
  にする。