ハモグリバエ類の見分け方
   

 マメハモグリバエによる被害(キク)      トマトハモグリバエによる被害(インゲン)


 ハモグリバエ類には多くの農業害虫が含まれる。特にLiriomyza属に属するアメリカ大陸原産のマメハモグリバエ,トマトハモグリバエの2種は,寄主作物の範囲が広く,薬剤抵抗性を発達させた個体群が世界中に分布域を拡大させ,農作物に大きな被害を及ぼしている。
 日本国内では,1990年にマメハモグリバエが発見され,その後,本県を含めて国内のほぼ全域に発生域が拡大し,各地で大きな問題となっている。
 1999年には沖縄県や京都府などで,マメハモグリバエとは色彩がやや異なるトマトハモグリバエが確認された。本県においては2000年12月に県本土のほぼ全域に分布していることが確認され,2002年2月現在では関東以西の30都道府県において発生が報告されている。



本県で発生している主なハモグリバエ類3種の形態

トマトハモグリバエとマメハモグリバエは同じLiriomyza属で,外見での判別は難しい。
 ナモグリバエは左2種とは異なるChromatomyia属であるため,成虫の判別は容易である。
     

トマトハモグリバエ   マメハモグリバエ    ナモグリバエ
  L.satibae         L.trifolli        C.horticora


食害痕の違い

トマトハモグリバエ
マメハモグリバエ (左)
ナモグリバエ (右)
糞痕 黒い線状に残る。 黒点状に見られるが,あまり目立たない。
食害 主に葉表を食害。 主に葉裏を食害。
蛹化  幼虫は,3齢になると葉から脱出し,
地中やマルチ上で蛹(回蛹)になる。
葉の中で蛹になり,羽化時に脱出する。




トマトハモグリバエとマメハモグリバエの頭部の違い

成虫頭部は大部分黄色であるが,トマトハモグリバエの方が黒色部分が広く,
頭頂剛毛(vte及びvti)の着生部分の色彩が異なる。

    
A:トマトハモグリバエ           B:マメハモグリバエ
(岩崎原図)                 (岩崎原図)       

トマトハモグリバエ マメハモグリバエ
頭部剛毛(vte)
着生部位
黒色部 黄色部
頭部剛毛(vti)
着生部位
淡褐色〜茶褐色部と
黄色部の境界
黄色部
中胸背面
光沢性


ハモグリバエ類3種の生態 

マメハモグリバエ(Liriomyza torifolii BURGESS)
    

  1.側面図(門司植防原図)       2.胸部背面図           3.頭部前方側面図
                           (門司植防原図)            (門司植防原図)
                         トマトハモグリバエに比べ
                        表面が粗く,光沢があまりない。

(形態)成虫:約2o   幼虫(老齢):2.5o  蛹:約2o

(寄主植物)ナス科,マメ科,キク科,アブラナ科,ウリ科等多くの植物に寄生が確認されている。
        イネ科,バラ科には寄生しない。

本県における主な寄主植物
 マメ科:インゲン,エンドウ,ソラマメ  ナス科:トマト,ピーマン  
 ウリ科:カボチャ,キュウリ,メロン   キク科:キク,シュンギク,ガーベラ
アカザ科:ホウレンソウ アブラナ科:コマツナ


トマトハモグリバエ(Liriomyza sativae BLANCHARD)
    

 1.側面図(門司植防原図)      2.胸部背面図       3.頭部前方側面図
                        (門司植防原図)      (門司植防原図)
                       マメハモグリバエに比べ
                               光沢がある。 


(形態)成虫:1.3〜2.3o   幼虫(3齢):約3o  蛹:1.3〜2.3o

(寄主植物)マメハモグリバエとほぼ同じで寄主範囲は広く,国内では5科33種の植物で寄生が確認されている。
        また,マメハモグリバエではあまり問題にならない,ウリ科で多発生している。

本県における主な寄主植物
 マメ科:インゲン,エンドウ,ソラマメ  ナス科:トマト,ピーマン  
 ウリ科:カボチャ,キュウリ,メロン   
                   ※本県ではキクへの寄生は確認していない。


ナモグリバエ(Chromatomyia horticora GOUREAU
   
 1.側面図(門司植防原図)        2.胸部背面図 (門司植防原図) 
                       
     Liriomyza属と違い,背面が灰褐色で,光沢がない

(形態)成虫:1.7〜2.5o  

(寄主植物)国内では,マメ科,アブラナ科,ユリ科等15科66種の植物で寄生が確認されている。

本県における主な寄主植物
 マメ科:エンドウ  キク科:レタス


トマトハモグリバエの県内発生分布調査(平成12〜13年)  

  本県では平成12年12月11日に6市4町で発 生が確認された。平成13年度までの防除所の調査では,
マメ類,トマトを中心に14市町・9品 目で発生が認められた。発生は今後も拡大していくものと思われる。

ハモグリバエ類2種の県内分布調査 (鹿児島県病害虫防除所)

科名 品目名 市町村名 平成13年度 平成12年度
L.sativae L. trifolii L.sativae L. trifolii
マメ科 インゲン 垂水市
佐多町
大根占町
エンドウ 開聞町
ソラマメ 出水市
阿久根市
指宿市
開聞町
山川町
ナス科 トマト 隼人町
大口市
宮之城町
加世田市
国分市
根占町
ウリ科 カボチャ 加世田市
メロン 加世田市
キク科 ゴボウ 川内市
キク 山川町
末吉町
入来町
川内市
阿久根市
佐多町
シュンギク 日吉町
根占町

         トマトハモグリバエの県内分布図