○ ランツボミタマバエの生態
@形態
ハエ目:タマバエ科
終齢幼虫の体長は約2mm(写真@)、成虫の体長は約1.5mmで蚊に似ている。
A生態
成虫は夜行性であり、夕刻に羽化し地上近くで飛び交いながら交尾する。交尾を終えた雌がランの蕾に飛来し、半ば開いた花蕾の先にまとめて産卵する。
幼虫は、一つの蕾に数十頭寄生することがある。
終齢幼虫は、跳躍して蕾を脱出し、土中や鉢土の中で蛹化し、2〜3週間で羽化する。
ハワイでは、1年中発生が見られ、1ヶ月以内で世代を繰り返している。
B寄主範囲
ハワイでは、ラン(デンファレ)以外にもハイビスカス、ニガウリ、パクチョイ、トマト、ナス、ジャガイモ、ピーマン、ジャスミンなどの蕾を加害することが確認されており、広食性である。
C分布
最初に加害が報告されたのは、ハワイのハイビスカスからであるが、もともとは東南アジアに分布していたものとされている。近年、タイから米国フロリダ州に侵入し施設栽培ランを加害している。また、オランダでの検疫でもタイ産ランの花蕾から捕獲されている。国内では、1989年に沖縄県名護市のデンファレ栽培施設で、18年2月に福岡県のデンファレで発生が確認されている。
国内での生態については不明な点が多い。
D被害
本種に加害された蕾はゴール化して落蕾や奇形花を引き起こし(写真A)、開花前に落下するか、開花しても花びらに傷がつくため(写真B)商品価値がなくなる。
○ 防除対策
1)本種は広食性の害虫なので施設外への脱出に注意するとともに、施設内の防除の徹底を図る。
2)発生している地域からの苗の導入にあたっては十分注意し、できるだけ本種に寄生されていないことを確認する。
3)本種が発生しているラン栽培施設では、植物体上の被害蕾や地上に落下した蕾を速やかに除去して幼虫の拡散を防ぐ。また、つみ取った被害蕾は袋などに密閉して適切に処分する。
4)棚下の地表部等にマルチを張り、蛹化場所を被覆する。
【参考資料】
湯川ら(2004)植物防疫.58(5):24-26
『最近、沖縄に侵入したランツボミタマバエとマンゴーハフクレタマバエ』
沖縄県植物防疫協会(2001)
『農作物病害虫診断ハンドブック』:292