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平成17年度病害虫発生予察特殊報 第1号
平成17年5月12日
奈良県病害虫防除所
1.病害虫名 アワダチソウグンバイ
学名:Corythucha marmorata (Uhler)
2.発生を認めた作物名 キク、ヒマワリ、ナス、サツマイモ
3.特殊報の内容 本県における農作物への初被害を確認
4.発生地域 県内全域
5.発生経過
1)平成15年6月に橿原市の農業技術センター内露地キク圃場(無防除)において、グンバイムシ類が多発した。葉に吸汁によると思われる白斑が発生し、葉裏には黒色のスス症状が発生した。その後8月以降県内各地のキク産地および家庭菜園のキクでも同様の症状が報告された。採集された標本を関西大学の宮武頼夫博士に同定依頼したところ、中南米原産の侵入昆虫であるアワダチソウグンバイCorythucha marmorata (Uhler)と同定された。
2)本種は平成11年に西宮市のセイタカアワダチソウで発生が確認され、平成12年から16年に大阪府、京都府、奈良県、三重県、滋賀県のキク科雑草や作物で発生が確認されている。奈良県では、平成15年秋には県内全域のセイタカアワダチソウで多発を確認しており、既に県内全域に分布していると考えられる。
6.形態および生態、被害(写真は病害虫防除所ホームページに掲載)
1)
成虫は体長約3mmで、軍配に似た形状をしている。前翅に多数の褐色斑紋があり、前翅周縁部に小棘が列状にあることから、他のグンバイムシ類と区別できる。
2)
卵は葉裏の葉脈沿いに産卵される。黒色で楕円形の靴のような形をしており、灰色円形のふたが付いている。下部は組織内に埋めこまれている。
3)
幼虫は小豆色〜黒褐色の紡錘形で、カメムシ類幼虫に似ており、葉裏に集合している。
4)6月〜10月にセイタカアワダチソウで多発し、ロゼットで越冬していることから、主にセイタカアワダチソウで生活していると考えられる。セイタカアワダチソウを除草すると周囲のヨモギやオオアレチノギクなどにも寄生する。4月中旬からセイタカアワダチソウで第1世代幼虫が発生し、5月下旬以降の第1世代成虫が農作物に飛来して加害する。露地キク圃場では10月以降の気温の低下による死亡個体を多く観察しており、その後の発生は終息するが、山際や林縁など日陰に自生するセイタカアワダチソウでは冬期に越冬成虫が多数見られる。
5)農作物では、キク、ヒマワリなどのキク科作物やヒルガオ科のサツマイモ、アメリカンブルーへの寄生、繁殖が確認されている。また、5月に露地ナスでも成虫の加害が発生するが、被害は一時的で、繁殖はしない。
7)定期的に殺虫剤散布を行っている圃場ではほとんど被害は発生しないが、長期間防除を行っていない圃場や、家庭菜園では多発する。
7.防除対策
1)第1世代成虫が越冬場所から分散し、圃場に飛来するのは5月下旬以降と考えられる。4月下旬頃から圃場周辺のセイタカアワダチソウなどをよく観察し、幼虫発生が見られたら5月上旬までに除草する。5月下旬以降飛来開始以降の除草は、圃場内に虫を追い込む可能性が高いので控える。
2)簡易な感受性検定の結果(下表)、7種の殺虫剤の効果が高いことを確認している。
8.謝辞
本種を同定して頂いた、関西大学の宮武頼夫博士に厚く御礼申し上げる。
9.参考資料
柴尾ら(2004)農林害虫防除研究会報告−高知大会−(講要)
表.アワダチソウグンバイ成虫に対する各種殺虫剤の効果
(2004年6月病害虫防除所調べ)
薬 剤 名
|
希釈倍率
|
供試数
|
補正死虫率(%) |
1日後 |
2日後 |
有機リン剤 スミチオン乳剤
オルトラン水和剤
DDVP50乳剤
マラソン乳剤 |
1000
1000
1000
2000 |
20
20
20
20 |
100
95.0
95.0
90.0 |
100
100
100
89.7 |
合成ピレスロイド剤 トレボン乳剤
アグロスリン乳剤 |
1000
2000 |
20
20 |
95.0
70.0 |
100
100 |
ネオニコチノイド剤 モスピラン水溶剤
アクタラ顆粒水溶剤 |
2000
3000 |
40
20 |
15.0
55.0 |
61.5
100 |
その他 コテツフロアブル
アファーム乳剤
ハチハチ乳剤 |
2000
1000
1000 |
20
40
40 |
100
20.0
7.5 |
100
46.2
23.1 |
キク葉を薬液に30秒浸漬し、風乾した後、アワダチソウグンバイを接種
注)薬剤への感受性を確認するための試験であり、農薬使用時は作物への登録内容を確認すること。
病害虫防除所ホームページ
http://www.jppn.ne.jp/nara/
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