平成21年度病害虫発生予察特殊報第3号 平成21年11月2日 栃木県農業環境指導センター |
ぶどうに発生したオウトウショウジョウバエ |
1 害虫名 |
オウトウショウジョウバエ Drosophila suzukii (Matsumura) |
2 発生作物 |
ぶどう |
3 発生確認に至った経緯 |
平成21年8月中旬、宇都宮市の無加温ぶどうハウスで果皮に穴があいて腐敗する症状が見られた。被害果内はウジ状の幼虫により加害されていたため、その幼虫を栃木県農業試験場で羽化させたところ、オウトウショウジョウバエの疑いがあった。そのため、農林水産省横浜植物防疫所に成虫の同定を依頼した結果、オウトウショウジョウバエであることが確認された。 本種のぶどうへの加害・寄生は、野外では北海道で確認されているが、本県では初確認である。 |
4 被害の特徴 |
雌成虫が熟したぶどう果実へ穴をあけて産卵し、孵化した幼虫は果実内部を食害する。食害された果実は腐敗し、落果する他、ショウジョウバエ類の発生源となる。 同じ園内でも、品種等によって本種による加害状況が異なる場合がある。 |
5 形態 |
成虫は体長3mm弱、暗黄褐色、雄は後方に向かって多少とも暗色となり、翅頂近くに小黒紋を有する(図)。雌の尾端にある産卵器の下縁には、鋸歯状突起が並ぶ。 蛹の体長は4mm内外で外被は赤褐色。前端にある1対の突起は、先端が多数の刺状に分かれる。 幼虫は体長約6mmに達し、白色のウジ状。 卵は乳白色、長径0.5mm内外の1対の糸状突起を有する。 |
6 生態・生活史 |
・オウトウでは、果皮を破って果肉内に産卵する。産卵は着色期から収穫期に集中し、被害果の発生もこの時期に見られる。 ・関東地方北部での発生回数は年間10回程度である。 ・卵から成虫までの発育日数は15℃で約30日、22℃で約14日、25℃で約10日である。 ・発育に必要な最低気温(発育零点)は約9℃である。 ・成虫は落葉下などで越冬する。 ・寄主植物はオウトウ、キイチゴ、クワ、ブルーベリーなど約20種が知られている。 |
7 防除対策 |
・本種は様々な果実の熟果に寄生するため、適期収穫を行い、被害を軽減する。 ・本種による被害果は見つけ次第取り除き、土中に埋める等処分する。 ・平成21年11月2日現在、ぶどうでの本種に対する登録薬剤は無い。 |
図1.被害果内部に寄生した幼虫 | 図2.雄成虫と被害果 |
図3.被害を受けた房全体の様子 |
参考文献 |
佐々木正剛(2005)オウトウショウジョウバエ,原色果樹病害虫百科 第2版 リンゴ・オウトウ・西洋ナシ・クルミ,p489〜492,農山漁村文化協会. |
詳しくは、栃木県農業環境指導センター(http://www.jppn.ne.jp/tochigi/)まで お問い合わせください。 Tel(028)626-3086 Fax(028)626-3012 |