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           平成3年度病害虫発生予察特殊報 第1号

                                   平成4年3月2日
                                  奈良県病害虫防除所

 病害虫名:タバココナジラミ(Bemisia tabaci GINNADIUS)

1.特殊報の内容
 1)発生地域  生駒郡平群町、御所市、橿原市
 2)発生作物  促成トマト、ポインセチア
 3)発生経過  本種は、昭和47年頃より宇陀郡山間の夏秋トマトで発生を認めたトマト黄化
        萎縮ウイルス病を媒介することが、奈良農試の研究で、明らかにされた。当時
        のタバココナジラミは、薬剤防除が容易であった。しかし、今回発生のタバコ
        コナジラミは、薬剤耐性の個体群で、平成元年頃より静岡・愛知・岐阜など各
        地の施設ポインセチアなどで発生し難防除の害虫として報告され、全国で34都
        府県で発生を確認している。
         本県でも、施設ポインセチアでは、平成2年頃より発生も認められ、野菜で
        の被害拡大が懸念されていたが、促成トマトでの被害が認められたので特殊報
        を発表する。
 4)発生面積  2.8ha(御所市1.2ha,橿原市0.8ha,平群町0.8ha)
 5)被害状況  トマトでは葉にすす病菌が繁殖し、果実の汚れが著しく、かつ果実の着色異
        常が生じている。
         ポインセチアでは、近似種のオンシツコナジラミと同様に、幼虫が排泄する
        甘露に、すす病菌が繁殖して汚れが目立つ。発生が著しい葉は落葉する。

2.防除対策
 1)耕種的防除
  i)施設での発生では周辺雑草管理を含めた防除と、後作に備えて収穫終了残渣の処理は、ビ
   ニールに包み周辺に分散させないように注意する。
  ii)作付のとき、育苗段階での発生を確認して、不用意に伝播させない様に注意する。苗の
   出荷や譲渡の場合には寄生を調べ、定植前から防除を励行する。
  iii)施設では寒冷紗被覆で侵入や放出をできるだけ防止する。
 2)薬剤防除
  i)薬剤耐性の個体群では、現在のところ薬剤で完全な防除は期待できない。
  ii)有効な薬剤としてトレボン乳剤、アプロード水和剤、モレスタン水和剤、スプラサイド
   水和剤がある。さらに薬剤耐性を発達させない様に、可能なかぎり同一薬剤の連用をさけ
   る。
 3)防除薬剤と農薬安全使用基準

薬剤名 農薬安全使用基準(収穫前日数/使用回数・使用濃度)
トマト メロン ナ ス ポインセチア ガーベラ
トレボン
乳剤
    前日/3回
1,000倍
−/−
1,000倍
 
アプロード
水和剤
前日/3回
1,000〜
2,000倍
    −/−
1,000〜
2,000倍
−/−
1,000倍
スプラサイド
水和剤
  14日前/3回
1,000〜
1,500倍
14日前/3回
1,000〜
1,500倍
−/−
1,000倍
 
モレスタン
水和剤
  うどんこ病
3日前/−
1,000〜
1,500倍
     

 モレスタン水和剤はコナジラミ類に対する登録はないが、うどんこ病での登録はある。しかし、
高温時に薬害を発生さやすい。

3.生 態
 寄主範囲は広く、ポインセチア、キク、ハイビスカス、ガーベラ、ナス、トマト、ピーマン、
ウリ類、チンゲンサイ、シソ、サツマイモ、インゲン、大豆、タバコの他ハルノゲシ、ヨモギ、
ヨメナ、スイカヅラなどの雑草にも寄生する。
 成虫は、オンシツコナジラミよりやや小さく、体長約0.8mmで体色が黄色で、羽根は白色。蛹
は体長0.8〜1.0mm、体幅0.6〜0.8mmで葉に付着している。冬期を除き1世代約1ケ月以内で経
過して、周年発生が可能である。